電気と水のストーリー

   

長野県企業局では、長野県の豊かな暮らしを支えつづけるために、安全安心なライフラインの確立と、2050ゼロカーボンの実現に向けて取り組んでいます。電気事業と水道事業、それぞれのプロジェクトの背景にある現在進行形のストーリーをご紹介します。

Vol.03

いざという時に、地域の自主的な給水を可能にする「安心の蛇口」

配水管の耐震化を進め、断水時でも飲料水や生活水を確保できる応急給水施設を順次整備しています。

「安心の蛇口」とは?

長野県企業局は県営水道として、長野市、上田市、千曲市、坂城町に給水しています。地震などの災害で配水管が壊れて断水した場合でも、給水エリア内で安心・安全な水道水を確保できる施設を整備したい。

その思いから生まれたのが「安心の蛇口」です。

災害時に住民の避難場所となる学校や公園など、断水時において特に給水が必要な「重要給水施設」に通じる配水管の耐震化工事を行い、「断水時にはここで給水できる」ことを地域の人々に認識してもらうためのモニュメントとして、普段は水飲み場として利用できる蛇口を設置しました。

坂城町文化センターグラウンドに設置された「安心の蛇口」

 

地域で自主的に給水が可能

平時は誰もが利用できる水飲み場ですが、大規模災害で断水した有事の際には、応急給水場に早変わりします。

複数の蛇口が設けられた組み立て式の応急給水栓を接続することで、その場に避難してきた人や、容器を持参して水を汲みに来る人など、一度に多くの人に給水することが可能になります。

安心の蛇口の運用は設置場所の管理者におまかせしているため、大規模災害で給水車がすぐに来られないような場合でも、それぞれの地域で自主的に給水をすることができます。

一刻を争う災害時には、地域に暮らす誰もが応急給水栓の組み立てと接続を行い、多くの蛇口を確保できるよう訓練を実施している

 

配水管の耐震化を推進

地域に「安心の蛇口」があることは、その場所までの配水管の耐震化が完了しているという証しでもあります。

近年各地で頻発する大規模地震を踏まえ、平成27年度から耐震化計画を進め、取水場や浄水場などの基幹施設の耐震化を令和元年度までに完了しました。

給水エリア内の配水管は、末端まで含めると全長1,500キロほどに及びます。重要給水施設につながる配水管の耐震化は、令和2年度末までに約70%が完了。令和5年度までに100%を目指して進めています。基幹の配水管に関しても、令和7年度までに耐震化100%に向けて取り組んでいます。

配水管はさまざまな素材のものがあり、地盤に合うもので整備しています。

重要給水施設である「安心の蛇口」までの配水管には、曲がりに強く丈夫なポリエチレン素材の管や、抜けにくい継手などで耐震化を行っています。

上田市東塩田小学校での設置訓練の様子。安心の蛇口があるということは、その地域の配水管の耐震化が完了していることを示している

 

設置場所は各市町と協議・調整しながら

「安心の蛇口」を企画するにあたっては、阪神淡路大震災の経験や教訓に基づいて災害時の応急給水施設を整備している神戸市の事例を学び、現地への視察も行いました。

設置場所の選定は各市町と協議し、地域防災計画も参考にしながら43か所をリストアップしました。千曲市の戸倉上山田温泉にある「湯のさと ちくま白鳥園」を皮切りに、小中学校、公園、公共施設など、令和4年度春までに12か所に整備が完了予定です。

人目につく場所への設置が望まれる「安心の蛇口」ですが、防犯や感染予防などの観点で、学校内への関係者以外の立ち入りが難しくなりつつあります。また、令和元年東日本台風被害によるハザードマップの見直しで、予定されていた設置場所の変更もありました。社会情勢の変化により生まれる課題に柔軟に対応しながら、令和7年度までに20か所に整備することを目指しています。

長野市三本柳中央公園にある安心の蛇口。普段は水飲み場として誰でも気軽に利用できる

 

運用をまかせることで防災意識を高める効果も

企業局では地域の防災訓練などにも参加し、地域の防災担当者や水道工事に携わる業者の方々に、組み立て式の応急給水栓の使い方をレクチャーし、地域の人々に「安心の蛇口」の存在を知っていただき、いざという時に活用してもらうための活動を継続的に行っています。

そんな活動の中でいただいた声を反映し、応急給水装置を軽量・小型化し、組み立てや収納をしやすく改良しました。

幸いなことに、まだ災害時には利用されていない「安心の蛇口」ですが、運用を設置場所におまかせすることで、「有事の際の給水は自分たちでやらなくては」と、地域の人々の防災意識が高まっているという声も聞こえてきています。

地域の小学校での設置訓練の様子。安心の蛇口の意味や役割を地域住民の方々に知ってもらう貴重な機会のひとつとなっている

 

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