電気と水のストーリー

   

長野県企業局では、長野県の豊かな暮らしを支えつづけるために、安全安心なライフラインの確立と、2050ゼロカーボンの実現に向けて取り組んでいます。電気事業と水道事業、それぞれのプロジェクトの背景にある現在進行形のストーリーをご紹介します。

Vol.01

水力発電で目指す持続可能な社会。 再生可能エネルギーの供給拡大と地産地消 

長野県の豊かな水資源を活かす水力発電により、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの供給拡大や利用、災害に強いエネルギー自立地域を確立することを目指しています。

「2050ゼロカーボン」達成に重要な、水力発電のクリーンエネルギー

企業局は、美和、春近の両水力発電所を引き継いで発⾜以来60年、長野県の山あり谷ありといった地理的特徴や、豊かな水資源を活かした水力発電所の建設を推進し、再生可能エネルギーを生産しています。

脱炭素社会を目指して掲げられた「2050ゼロカーボン」達成のため、再生可能エネルギーのさらなる供給拡大のために水力発電所を増やすことを急務とし、現在23か所にある水力発電所に加え、令和7年度までに13か所に新規建設することを計画しています。

並行して、 老朽化した基幹発電所の大規模改修を行うことで、小規模の発電所に相当する出力増強をはかりました。

大規模改修工事が進む西天竜発電所

中小水力発電の適地を“発掘”するプロジェクト

水力発電所というと大きなダムを思い浮かべる方も多いかと思いますが、これから建設が計画されているのは、地域に根ざした小規模なものです。

中小規模の水力発電所建設に適した場所を探すための「新規電源開発地点発掘プロジェクト」を発足。適地の条件となるのは、採算がとれるか、地域の理解が得られるか、周囲の環境に大きな影響を与えないかなど、多岐にわたります。

市町村からの情報提供や、県庁の関係部局との連携による結果、有力候補地点が10か所“発掘”されました。

そのプロジェクトにより新しく建設されたのが、令和3年4月に運転を開始した、松川町の「小渋えんまん発電所」です。すでにあった「小渋第2発電所」の冷却水の落差を有効活用して再生可能エネルギーを生み出しています。

小渋えんまん発電所。小渋第2発電所の水車や発電機を冷やすために利用している水を有効活用して発電

 

地域に根ざした「地域連携型水力発電所」

計画段階から地域の人々と対話を重ね、地域の発電所としての活用や、協働による維持管理体制を前提として建設を推進しているのが「地域連携型水力発電所」です。

辰野町に建設された「横川蛇石発電所」は、一般家庭約420世帯分の電力の発電が可能で、令和2年4月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度による売電を開始しました。

発電所の名称は地域の子供たちから公募。「蛇石(じゃいし)」とは、横川ダムの上流にある国の天然記念物で、 岩の縞模様が大蛇のように見えることからそう呼ばれています。

発電所を観光や学習の場としても活用できるよう、建屋の外観は周囲の自然環境になじむデザインにし、外から発電所内部を見学できる窓を設け、展望デッキや親水公園を整備しました。辰野町主催のスタンプラリーのスタンプポイントとしても利用され、地域の人々に親しまれています。

420戸の家庭の発電を可能とし、観光地としても期待される横川蛇石発電所

 

自立分散型のエネルギーで、災害に強い地域づくりを

横川蛇石発電所のもう一つの大きな特徴は、停電時でも発電できる自立運転機能を備えていることです。停電時に地域住民が電気を使えるよう、屋外に非常用コンセントが常設されています。

企業局は、このような自立運転機能を持った発電所を各地域に建設し、大規模災害による停電時に、地域の水力発電所からその地域へ直接電力を供給する 「地域連携水力発電マイクログリッド」構築の実現に向けて、国や電力会社とともに取り組んでいます。

停電時にも発電可能な自立運転機能を備えていることも特徴のひとつ

 

水力発電による「信州Greenでんき」の利用で目指す「2050ゼロカーボン」

令和2年4月より、中部電力ミライズ、丸紅新電力、みんな電力の3社によるコンソーシアムから、企業局の水力発電所の電力が「信州Greenでんき」として購入できるようになりました。セイコーエプソン、八十二銀行、長野県立大学、伊那市など、県内の企業や自治体で利用されています。

一般家庭向けにも販売され、信州Greenでんきプランを契約することで、環境にやさしい信州産CO₂フリー電気を利用することができます。電気料金の⼀部は、長野県内の再⽣可能エネルギーの拡大や維持活動にもあてられます。

長野県内で作られた再生可能エネルギーを、県内で購入して利用するエネルギーの地産地消が、二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「2050ゼロカーボン」を実現し、持続可能な社会を目指すことにもつながります。

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